実家では、親父殿が趣味の延長で農業をやっている。
で、多くの家庭菜園にあるように、農機具をしまうための小屋が畑の脇に作られているんだけど、この小屋が老朽化して屋根がなくなってしまった。扉が破れて屋根が吹き飛ばされたのである。
古い小屋も誰かの自作だったらしく、それを親父殿が手直ししたのが10年も前の話。それが壊れたと言うことで、まあなんというか順当な話ではある。
流石にこのままでは小屋としての機能を果たさないので、修理するか新設するか、ということになった。
シリーズ化したので関連リンクを紹介しておく。
<<DIYで農機具小屋を作った話>>
計画のお話 | 作業に関するお話 |
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【計画その1】 単管で基礎構造を作る | 単管を組み立てるのに必要な道具 |
【計画その2】 屋根構造を決定していく | けがき道具はとても大切 |
【計画その3】 壁構造の検討をする | 波板トタン貼りに苦労した話 |
【計画その4】 扉構造を決定する | レンタルの回転工具を借りて失敗した話 |
小屋作りにインパクトドリルが活躍した話 |
注:あくまで素人DIYなので参考にする程度にして欲しい。
床構造を考える
計画する前に確認したいこと
農機具をしまっておく屋根付きの小屋は、ある程度の規模で農業をやる上では用意しておきたい設備なんだよね。
農地に農業用倉庫や作業場など、農業用建築物を設置する場合には、基本的に「農地法の手続き」「建築基準法に基づく建築確認申請の手続き」が必要になります。
~~略~~
そのため、表題の「自己所有の農地に農業用倉庫を建てるのに申請は必要?」という問いに関しては、2a(200㎡)未満であれば”許可”は不要になります。
が、その分、必要になるのが「農業用施設証明」です。農業用施設証明は、自己所有の農地に農業用倉庫などの農業用施設を建てたいとき、「2a(200㎡)未満の農地」「転用目的が農業用施設」である際、必要になります。”この手続きによって”、農地法4条許可が不要になるのです。
”許可”は不要と書きましたが、先述した通り、農業用倉庫という「建築物」として扱われるものを建てることになるため、「都市計画法」の手続きは必要です。
カクイチのサイトより
なお、移築ということにはなるが、都市計画法の手続きは必要になってくる。
厳密には、「建築物」として扱われるモノを建てる時に必要なので、屋根と床だけの状態であれば不要。3方に壁を作ると申請が必要な状態となる。つまり、壁が出来てから考えても良いということにはなるのだが、早めに対処しておいた方が良いだろう。
<手続き内容> | <相談先の例> |
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農地法について | 農業委員会等 |
建築確認申請について | 建築事務所、市区町村の建築課等 |
都市計画区域について | 市区町村の都市建築課等 |
建築基準法上の道路について | 市区町村の建築住宅課等 |
自分の土地だからって、勝手に建物を建てると怒られることになる。分からなかったら役所に相談するべきだ。
なお、「建築物」とは「屋根と柱又は壁を有するもの」を指し、農業用倉庫等であっても建築物に該当する。ただし、平屋建てかつ100㎡未満のものは建築確認申請は不要ということになる。
100㎡というと、30坪(60畳)程度。多くの人はここまで大きな小屋を作ることはなかろうが、分からなかったら確認、それが大切である。
単管を購入しよう
メリットはやり直しが容易という点
さて、農機具小屋といっても、構造強度をある程度必要とするし、素人がやれることというのはたかが知れている。だから、出来るだけ素人作業でも出来る方法を選ぶ必要がある。
そこで、足場作業に使われる単管を用いることとした。
単管を使って建物の構造基礎を作る時のメリットは、クランプで固定する構造であるためにやり直しが容易だということだね。
建ててから「大きすぎる」とか、「ちょっと小さい」とかいうことになりがちな素人施工において、目視で大きさのイメージが掴めるというのはそこそこのメリットとなる。

単管はホームセンターなどに行けば、色々なサイズでおいてある。必要であればカットもして貰えるよ。
デメリットもある
なお、デメリットはクランプする構造であるため、壁などを設けにくいことだ。クランプを使うと単管2本分+アルファの厚みが出来ちゃうので、結構構造に悩むことに。
クランプを使わずにL型金具とかT型金具とか用意すれば良いのだけど、単管を綺麗にカット出来る方法を用意する必要があるため、ちょっとハードルが高くなる。単管をカットして貰うサービスを使う場合は、キチンと計画してサイズを出さねばならず、クランプ構造のように組み直して試行錯誤できるメリットが失われてしまう。そしてそこそこ費用がかかるというのも困ったものである。
また、運ぶには一工夫必要で、ホームセンターで購入した単管は自分で運ぶ必要がある。普通乗用車であれば2mの長さまでは載せられる。軽トラでも2.5mまでかな。それ以上の長さになると、荷台からはみ出るので、やや工夫が必要である。
ホームセンターで軽トラなどを貸してくれるところもあるし、1tトラックを貸し出してくれるところもあって、それなら3mでも運ぶことができる。ただ、長尺モノを運ぶ際にはロープワークなどを覚えておく必要があるので、事前にしっかり予習しておこう。

自信が無い方は配送サービスを利用するようにすべきだ。
足場とクランプ
さて、我が家では単管+クランプという作り方で構造を選択した。
壊れた小屋を撤去して、新たにその場所に同じ規模の小屋を建て直せば良かったのだけれど、小屋作りには時間がかかることが予想されたし、立地条件的にちょっと困った問題もあって移設することにし、そこに単管の柱が複数立っているので、これを利用することにしたのである。
で、取り敢えずは足場というか、床の構造体を単管で組むことに。

やや農地の水捌けが宜しくないので、高床式の倉庫を作ることにした。
基本は2m×1.5mの構造体にすることにしたのだが、この構造体を組むには耐荷重を計算しておかねばならない。
以下は、ちょっと面倒な話をしているので、次の見出しまで読み飛ばして頂いて構わない。

曲げ荷重というのがあって、この計算は大学の構造力学などの講義で学ぶことが出来る訳なんだけど、既に計算して表になっているのでこれを使っていく。1.5mスパンだと162kg、2mスパンだと122kgまでなら荷重を除いた時に元に戻るとされている。元に戻らない荷重(塑性変形域荷重)になるようなスパンを選んではいけない。
小屋の床構造は根太を等ピッチで配置する予定なので、曲げ荷重はさほど気にする必要はないはずだが、小屋内に収納する物の荷重はこれを超えるような重量であっては困る。ざっと計算して、500kgくらいは欲しいので、800~900mmピッチくらいにはしておきたいところ。
建物の揺れの原因にもなるしね。
クランプに許される垂直荷重
あとは、クランプにかかる垂直荷重がどの程度許容されるかだが。

クランプの耐荷重は自在クランプで1箇所350kg、直行クランプで1箇所500kgである。これ以上の重量がかかると破損するので、これを超えるようなのは先ずNGだ。実際には四角い構造体にするので、曲げ荷重の話はそこまで心配する必要はないし、分散して荷重がかかることになるので1箇所にピンポイントで500kgかかることにはならない予定。
そして小屋の床面積が2m×1.5mでは狭いので、もう少し広げた足場を考えてみよう。

こんな感じの構造にすることを考えると、ザックリ計算して500kgくらいまでは行けそうである。
基本は直交クランプを選ぼう。
で、単管と単管を結びつけるのに使うのは、直交クランプというヤツだね。工事現場でもよく使われる定番アイテムである。
タイプとしては自在クランプというのもあるんだけど、やや強度が低い面があるのと、ガタが出やすい構造なので直交クランプが使える部分は全部直交クランプとすべきだ。
自在クランプでないと使えないところだけ自在クランプを選ぼう。
部分的には特殊形状のクランプが便利なことも
さて、このような構造の足場を考えると、部分的に特殊なクランプを使った方が収まりが良いことがある。
ざっと、屋根まで骨組みを作った状態がこちら。

説明の都合上、屋根部分は見せていないが、例えば丸を付けた部分には特殊な物を使った方が良いと思う。こういうヤツだ。
入手はやや難しいが、店によってはおいてあるところもあるだろう。特殊な収まりをする部品ではあるが、横方向に配置する単管を同じレベルに配置出来るので、設計上都合が良い場合もある。
この他、筋交い用のクランプなども存在するので、賢く使うのが良いと思う。

で、50mm以上の高さの根太を置く。ホームセンターにどんなサイズがあるかは調査しておかねばならないが……。とまあ、根太のサイズはともかくとして450mmピッチで配置することは決めている。で、それを留める方法なんだけど、こんな金具を使う。
この金具は、配管を固定するためのアイテムなので、本来、木材を単管に固定する用途に使うべきではないのだけれど。
ただ、固定に使うM4ネジの最小引張破断荷重は約370kg程度なので、床に使うのであれば上から荷物が置かれることを想定していれば、用途違いではあるのだけと使えると思う。
心配な方は、厚手のものもあるのでそちらを用いると良いだろう。なお、垂木クランプという便利アイテムもあるので、こちらを使う方が強固に固定可能である。
要所に使っておくと良いと思う。
構造用合板を敷き詰める
そして、この根太の上に構造用合板を貼れば、強度的には問題ないだろう。

どのように合板を貼るかは未だ決めていないのだが、このあたりはもうちょっと寸法をしっかり測って決定していきたいと思う。
単管構造を採用する時に注意したいこと
なお、きっちり位置を決めて単管を配置する場合、地面に杭打ちして固定するようなことが考えられる。
が、上に書いたように、現状では既にブドウ棚として棚が作られていて、単管は地面に杭打ちされて立っている。腐食は気になるところだが、構造としてはしっかりしている。
だけど、作った後で反省したのだが、このような構造を採用する場合には、全ての柱を打ち込み柱とするのは避けた方が良い。単管を地面から垂直に生やすのは結構大変だし、後から計画変更することも難しい。
幾何学を囓ったことがある人なら理解していると思うが、四角形の位置を決定するためには3点が固定される必要がある。逆に4点目以上追加する場合には、正確に位置決めしないと四角形が歪むことになる。これは平面を決定する場合も同じで、3点決まると平面が規定されるのだけれども、4点目は調整できる格好にしておかないと面が歪んでしまう。
何が言いたいかというと、複数柱を打ち込むのではなくて2本または3本打ち込んだら、後の柱は調整可能にすべきだという話。
まあ、農機具小屋程度のものであれば、正確に出来ていなくても力業でなんとでもなるのだけれど、それでも苦労することになるので頭の片隅に入れておくと良いと思う。
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